【枕木山華蔵寺と杉井霊泉】
本庄から見た枕木山(島根郡255大倉山、右側の山 2017年8月1日撮影)
枕木山華蔵寺の杉井霊泉(2017年9月5日撮影)
前々回第13景で安来市清水寺参道の湧水を紹介した際に、同じように岩から水がわき出る不思議な光景の事例があるとして、枕木山華蔵寺を挙げたが、その場所である。
現在の駐車場から歩く参道とは別に、本庄から上ってくる本来の参道の途中にある。手前は橋となっており、湧水はそこを下り落ちている。これも、枕木山に参詣した際には是非立ち寄ってほしい。
この湧水であるが、『風土記』島根郡263にみえる長見川(現長海川)の水源地の一つである(下地図)。このことを指摘したのは服部旦氏で、早く水源と枕木山との関係や鰐淵寺との類似についても述べているが、卓見であろう。
また、寺伝ではこの水が亀山法皇の病を治したとされるが、類似の伝承が鰐淵寺や『忌部総社神宮寺縁起』に見える。
華蔵寺の開基が、桓武朝の智元上人によるとされる点もあわせ、『風土記』記載の河川の水源地が信仰の対象となる過程は、いろいろと検討の余地がありそうだ。
参考文献
服部旦1990「『出雲国風土記』長見川と大鳥川」『大妻女子大学文学部紀要』22
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