委員 吉松大志
みなさんこんにちは。出雲古代史研究会委員の吉松です。
出雲の古代史をさまざまな角度から学べる本をおススメするブログ
第2回目は出雲古代史の古典とされる名著をご紹介します。
門脇禎二著
(日本放送出版協会、1976年、B6判、262ページ)
古墳時代の日本列島には各地の国王が治める国家が存在したとする「地域国家論」で知られる門脇禎二(ていじ)氏による、「出雲国家史」をまとめた一書です。
門脇氏の専門は文献古代史ですが、歴史資料だけでなく、神話分析や考古資料を用いて出雲王国の興亡を豊かに描き出しています。しかも単に「大和対出雲」という図式だけでなく、吉備との関係や日本海交通、また朝鮮半島と出雲の関わりを織り交ぜながら叙述しており、まさに出雲古代史の「教科書」と言えます。
個人的な思い出で恐縮ですが、私が夜行バスで初めて出雲を訪れた際、旅のお供に持参したのが、古本屋でみつけたこの本でした。窓からもれる早朝の陽光の中、眠い目をこすりつつ本書をながめながら、これから訪ねる古代出雲の史跡たちへの期待に胸を膨らませていたことを今でも忘れません。
今から50年弱前の書籍ということもあり、特に古墳の捉え方については隔世の感があります。また全体の構想が「出雲敗北史観」で貫かれており、現代の歴史学の研究視角からすると「色あせた」印象は否めません。
それでも、学際的に出雲の古代史を捉えようとする研究手法は、蛸壺化・個別細分化が叫ばれる現代の我々も大いに学ぶべきものと感じます。すでに絶版となっていますが、インターネットや古書店などで安価に手に入れられますので、ぜひ一読をおすすめします。
→次回は5月末更新予定。