今年の2020年は、『日本書紀』が成立して1300年めにあたります。島根県をはじめあちこちの博物館で様々な企画展がひらかれているところです。本もたくさんでました。
→島根県立古代出雲歴史博物館 企画展「編纂1300年 日本書紀と出雲」
斎藤英喜『読み替えられた日本書紀』角川選書、2020年、本体1700円
《参考》
山下久夫/斎藤英喜 編『日本書紀1300年史を問う』思文閣出版、2020年、本体8500円
弥生時代のころ、列島-大陸・半島の行き来がさかんになります。倭王権(日本)は、大陸・半島より
① モノ=筆記用具(硯・筆など)→田和山遺跡の硯のかけらが有名です
② ヒト=文字を書ける人びと
③ 情報=本(漢籍)・紙・筆などの作り方
をとり入れました。国づくりを急スピードで進めた7世紀後半に、色々な書類形式も定まります。文字を書くことがかくだんにふえました。
8世紀に国ができると、天皇(大王)の正統性を主張しなければなりません。中国の歴史本(本紀+表+志+列伝)にならい、『#日本紀』(『#日本書紀』のもとの名前)・『#風土記』・『#古事記』といった本もつくれるようになったのです。『風土記』は『日本(書)紀』の地理版(志)として作られたという説もあります(三浦佑之ら)。
よく #記紀神話 とよばれますが、『日本書紀』と『古事記』をつくった目的がそれぞれ異なるため、記事の性格も同じではありません。
長いこと『古事記』は忘れ去られており、『日本書紀』が公式の記録として重んじられてきました。江戸時代の #本居宣長 によって評価が逆転し、『古事記』を正統とする見方が今なお大きな影響をあたえています。
『日本(書)紀』の特徴
記事(物語)・表記は一つにまとまっていない。記事(物語)は、主文+副文(一書)と何通りもある。『日本書紀』の最も新しい持統天皇の本名でさえ、使う漢字や表記がバラバラ
オリジナル(原本)は残っていない→八木書店コラム 2018年2月2日更新 日本書紀の写本一覧と複製出版・Web公開をまとめてみた
私たちが古典をそのまま読めないように、後の人びとも書かれている言葉の意味がわからなくなります。『日本書紀』は大変、難しい本です。その時、その時の見方で注釈がたくさんつくられ、新しい読み方が絶えずつくられるのです。古代にできた『日本書紀』は、古代にとどまりません。
島根県立古代出雲歴史博物館(島根県出雲市)は、島根県でもっとも古い『日本書紀』の写本(データー)をじっくりみられるようにしています。これを機に写本(データー)もみてみませんか?