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『出雲国風土記』(島根県古代文化センター編)の楽屋ばなし

  • 2 日前
  • 読了時間: 3分

会員 野々村 安浩



皆さん、こんにちは、会員の野々村安浩です。

今年の3月に、私も編集作成の一人として参加した島根県古代文化センター編『出雲国風土記』(島根県教育委員会、2025年)が刊行されました。今回は、この書籍の作成の楽屋ばなしをしましょう。





島根県古代文化センターでは、2022年に『出雲国風土記-地図・写本編-』(八木書店、B5版で640頁余。以下、『地図・写本編』)、2023年に『出雲国風土記-校訂・注釈編-』(八木書店、A5版で730頁余。以下、『校訂・注釈編』)と、『出雲国風土記』(以下『風土記』)についての最新の研究成果をまとめた書籍を編集刊行しました。



この二冊は、①各写本間の文字の異同について比較できる、②『風土記』記載地名を現在地図に落とし込んでいる、③国文学・歴史学・自然科学など多分野の最新の研究をも取り入れた、などの特徴をもち、どちらかといえば研究者向けの大部なものでした。



そこで、この二冊の内容をコンパクトにまとめ、『風土記』をもっと手軽に活用してもらえるようにと、『校訂・注釈編』刊行後まもなく、古代文化センターでは本書の作成作業をはじめました。


まず、体裁は「手軽に」とのことで、ポケットに入るような文庫サイズ案や新書サイズ案も出ましたが、前記の二冊の内容を「コンパクトにまとめる」のはなかなか難問でした。読みやすい文字サイズや盛り込む情報量、紙面構成などを勘案した結果、最終的に現行のサイズ(四六版)に落ちつきました。作成者間では普段「ポケット版風土記」と呼んでおり、四六版で本当にポケットに入るのか心配でしたが、上着のやや大き目のポケットには入ることがわかり、安心しました。





さて、本書の構成ですが、読み下し文編(簡単な脚注つき)、本文編、解説、索引、出雲国風土記道路図、出雲国風土記地図からなります。



本文編では、『校訂・注釈編』の文字の校訂を全面的に再検討し、改めたところもありますし、同様に読み下し文編の脚注でも短いながら内容を改めた項目もあります。また、『風土記』には詳細で難解な距離を記した交通路記事がありますが、その理解を助けるために他の注釈書にはない「道路図」も付しています。



これまでの『風土記』の注釈書の多くは、国文学の研究者の方の編集になるものでしたが、前記の二冊とともに、本書は歴史学などの新しい研究成果も「ギュッ」と盛り込んだものとなっていると思います。



『風土記』の景観が多く残っている出雲地域に本書を携えて足を運び、『風土記』の世界を是非体感してください。また、より専門的に知りたいときは『地図・写本編』『校訂・注釈編』の二冊に進んでください。



本書を繙(ひもと)くことにより、『出雲国風土記』により一層親しみを感じていただけると思います。



島根県古代文化センター 編

ハーベスト出版、2025年3月、本体1500円+税



ポケット版『出雲国風土記』



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